2010年6月に施行された貸金業法は、他の先進国には例を見ないほど過剰な規制を消費者金融市場に敷いた。この副作用として、消費者金融会社を含めた正規の貸金業者からの借入が困難となった資金需要者の一部はヤミ金融の市場に流れている。
ただし当初、想定されるような形態とは異なり、今日暗躍するヤミ金融は特定の借入困難者を狙って融資することで、事件が表面化しないよう債務者の弱みに付け込んだ様々な「ビジネスモデル」を構築している。例えば、多重債務に陥った収入の安定した公務員や、大企業の従業員に特化したヤミ金融は多少の延滞発生を織り込みながらも、給与や賞与の一部(または全部)を回収するビジネスモデルを作り上げている。延滞した場合、勤務先に督促の連絡を入れることで精神的に脅迫することも行われている。
また、貸金業法の施行以降、顕著に借入困難となったシングルマザーや専業主婦といった属性の女性に対して、合法的な個人間融資を装ったヤミ金融もネット上で増殖している。しかし、その実態は性的な関係を持つことを条件に貸し付ける極めて陰湿なヤミ金融である。
つまり今日、様々な歪んだ格好で進化を遂げているヤミ金融は、融資対象とする顧客層の弱みに付け込み、被害の告発を躊躇わせることで、警察による捜査の目をかいくぐろうとしている。本論文では、司法関係者へのインタビュー調査や公判記録に基づき、異形な金融システムとして日本の社会に浸潤しつつあるヤミ金融市場について報告する。
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