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全文: "意識に相関した脳活動"
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  • マッキン ケネスジェームス
    知能と情報
    2015年 27 巻 5 号 155
    発行日: 2015/10/15
    公開日: 2017/11/18
    ジャーナル フリー

    結び付け問題(Binding Problem)は,脳科学における未解決の主要問題の一つである.結び付け問題は,広義には脳内で並行に行われる様々な情報処理をどのように統合するかの問題であるが,頻繁に取り扱われるのが,脳内の視覚情報処理において,別々の場所で処理される「色」「形」「動き」などの情報を,どのように結び付けて一つの対象として認識するかという問題である.網膜からの信号は,大脳皮質の視覚野(visual cortex)で処理される.目からの視覚情報は,像の輪郭や位置などの抽出を行う初期視覚野を経由し,「色」「形」「動き」などの高度な特徴を抽出する高次視覚野で脳内の別々の場所で処理される.例えば,青い四角形と赤い円形が同時に示された時,高次視覚野では青,赤,四角と円の特徴を認識する領域が活動する.この時,どのようにして,青と四角を一つの対象とし,赤と四角を別の対象として認識するかが結び付け問題である.

    結び付け問題の説明には多くの説が提案されている.結び付けの主要な仕組みとしては,神経細胞の同期発火,選択的注意,および短期記憶などがある.近年の研究成果では,これら単一の方法ではなく,複合的に結び付けが行われている可能性を示している.同期発火説(Temporal Synchronization Hypothesis)では,脳の複数の神経細胞が同期的に発火することにより,情報の結び付けを行い,また同期の位相により別の物体との識別も可能とする.オブジェクトファイル理論(Object- file Theory)では,選択的注意(Selected Attention)により,注意の対象のためのオブジェクトファイルと呼ばれる視覚的短期記憶(Visual Short- term Memory)が用意され,対象に関係する特徴情報が結び付けられる.特徴統合理論(Feature Integration Theory)では,視覚信号から素早く荒い識別が行われ,荒い識別結果を元に注意対象の位置を決定し,その位置に関連する特徴をオブジェクトファイルに結び付けて詳細な認識を行う.

    人工知能分野においても,人工ニューラルネットワークによる結び付け問題の研究は積極的に進められている.今後は,結び付け問題研究の成果を元に,意識に相関した脳活動 (Neural Correlates of Consciousness)の解明が期待されている.

  • 笹原 和俊
    知能と情報
    2015年 27 巻 5 号 155
    発行日: 2015/10/15
    公開日: 2017/11/18
    ジャーナル フリー

    小鳥の「さえずり」(歌)は,縄張りを巡るオス間競争やメスへの求愛の場面で使用される学習性の音声信号である.仲間を呼んだり,危険を知らせたりする際に発せられる生得的な地鳴き(コール)とは区別される.特に,鳴禽類(歌鳥)のさえずりは複数の音要素が一定の順序で配列された系列構造をもつ.生後,雛鳥は周囲の成鳥(おもに父親)のさえずりを聞いて記憶することで,脳の神経回路網にさえずりのモデル(聴覚記憶)が構築され,それを元にして発声練習を繰り返し行うことで独自のさえずりを発達させる.さらに,さえずりの系列構造は種ごとに様々な特徴があり,さえずりの系列規則は「さえずり文法」(歌文法)と呼ばれる.例えば,ミヤマシトド(White-crowned Sparrow)のさえずりは,数種類の音要素を定型的に繰り返す単調な文法をもつ.ジュウシマツ(Bengalese Finch)のさえずり文法はもっと複雑で,十数種類の音要素が様々な順序で配列され,その系列構造は有限オートマトンで記述できることが知られている.複雑なさえずりをもつオスほどメスに好まれることが実験で示されており,これはさえずり文法が性選択によって進化した可能性を示唆している.オオムジツグミモドキ(California Thrasher)のさえずりはさらに複雑で音要素は100種類を超える.これらの音要素の種類をノード,それらの間の遷移をリンクとしてネットワークを構成すると,その構造は小さな平均ノード間距離と高いクラスター係数を併せ持つ「スモールワールド・ネットワーク」になることが報告されている.このことは,複雑なさえずりがランダムとは程遠く,特定の設計原理をもつことを示している.さえずりが学習性の音声であることや音声系列には文法があることなど言語と類似した重要な特徴があることから,さえずりは言語の生物モデルとして現在盛んに研究が行われている.これらの研究成果は,言語の生物学的基盤の解明やその知見の工学的応用につながると期待される.

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