産業が大きく発展した 19 世紀には、出版業界にも大きな変化が起きた。流通する出版物の量が増えるのに伴い、出版業者、書籍業者の中には他の出版社を吸収合併し、大企業へと発展するものも現われた。同時に彼らは自分たちの業界を組織化し、商売上のルールを整備しようとした。出版業者アドルフ・クレーナーは書籍店で徒弟修行を始め、結婚により印刷所を譲り受けて兄弟と共に出版社を運営、次第に事業規模を拡大し、他の出版社の買収により巨大グループ会社に成長させた。書籍業界の全国組織である書籍商取引所組合会長にもなった彼の経歴にはこの業界の動向がよく反映されている。それを辿ることで19 世紀後半から 20 世紀にかけての出版を巡る状況がより理解できるはずである。
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