近年日本においては,企業経営者や従業員等に対してストック·オプションを導入する企業が増えている.本稿では,ストック·オプションに関して,企業レベル·データを用いた各種の実証分析を実施する.とりわけ,個別企業のオプション価格評価額を,ブラック·ショールズ·モデルおよび二項モデルを用いて算定し,オプション価格評価額自体が企業の収益性にどのような影響を及ぼしているのかを分析している点が,本稿のオリジナリティのある部分である.実証分析の結果,海外法人の株式所有割合が高い企業およびレバレッジが低い企業がストック·オプションを導入する傾向が強いこと,ストック·オプションの導入によって企業の収益性が向上する効果は限定的であること,ストック·オプション導入と経営者による自社株保有とを比較すると,経営者による自社株所有はストック·オプションに比較して,企業の収益性向上に総じて有効であること,などの結果がそれぞれ得られている.
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