原因不明反復・習慣流産患者18組の夫婦36名と流早産歴のない正常分娩夫婦ならびに新生児20組60名のHLA-G,HLA-Eの遺伝子多型を解析した.その結果,HLA-G遺伝子アリル多型頻度に関しては,両群ともHLA-G*010401が圧倒的に高く,*010102,*010101,*010108の4種が主要なものであった.正常対照群にのみ観察されたHLA-Gアリルは*0105N,*010105,*0106の3種で,このうち危険因子と指摘されている*0105Nの検出頻度は2.4%と僅少であった.逆に流産群にのみ発現していたアリルはHLA-G*0103の1種のみで,これも危険因子と報告されているが,頻度は1.3%ときわめて低かった.HLA-E遺伝子アリルについては,両群ともHLA-E*010301,*010302,*0101の3種のみ検出された.また,HLA-GとHLA-E遺伝子アリルの夫婦間シェアリング数が増えるにしたがって遮断抗体活性が暫減する傾向が窺われた.HLAクラス1b抗原の免疫特性と発現部位から,妊娠時の寛容誘導に重要な役割が想定されるので,今後同種免疫性流産の発生機序の解明と診断基準の設定に,積極的な研究の展開が望まれる.〔産婦の進歩58(2):136-146,2006(平成18年5月)〕
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