本論文は土嚢などジオテキスタイルを使用したブロック積層体の新しい機能性を検討する基礎資料とするために,石垣積層壁面の安定性とその表面に吸着する蔓の役割に関する分析結果を示す。石垣の安定性は連続体力学としてではなく,ブロック壁面として個々のブロックが連なる膜骨格としての安定性を評価するモデルを構築する。さらに表面に吸着する蔓の吸着効果をブロック間に作用する粘着力として評価する。本論文では粘着力の効果を取り入れたブロック間のクーロン摩擦力でモデル化し,パラメーターの感度を示すとともに,蔓の中でもオオイタビを対象にして気根の分布密度,幹の径,引張り強さなどを示す。概略的なモデルではあるがブロック感度分析結果では,蔓の吸着力はブロック間すべりには重要な役割があるが,回転に対する影響は少ないことが分かった。またブロックは小さく,扁平で長い形状を傾斜させて積層すると効果があるが,限度があることも結論された。本研究段階では直立した石垣壁面を対象にしている。将来的には日本古来の石垣積層壁面曲線を対象に感度分析検討は行う必要がある。
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