症例1:47歳,男性.逆方向性l型心房粗動(AFL).三尖弁一下大静脈間峡部への高周波通電中に頻拍周期は195msec~230msecに延長した.追加通電にてAFLは停止したが,その後も峡部には伝導が残存していた.冠静脈洞入口部ペーシング中に峡部伝導を調べると,三尖弁輪側は完全伝導ブロックパターンであったが,下大静脈側に伝導が残存していた.下大静脈側への通電で両方向性の峡部完全伝導ブロックを得た.
症例2:58歳,男性.1型AFL.三尖弁輪-下大静脈環境部への高周波通電中に体表面AFL波形が変化した.焼灼部位(三尖弁-下大静脈間峡部の下大静脈側)の心房電位は100msecに大きく分裂したが,AFL周期は不変(220msec)であった.三尖弁輪側には分裂のない心房波が記録され,同部位への通電でAFLは停止し,両方向性峡部完全伝導ブロックが完成した.右心房造影を行うと,三尖弁輪一下大静脈間峡部の中間部に深いpouch-like recessを認めた.AFLに対するカテーテル焼灼術において三尖弁輪一下大静脈間峡部に縦解離が認められた場合,解剖学的・電気生理学的位置関係を把握することが重要と考えられた.
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