兵庫県の日本海側の砂浜海岸23 地点においてスナガニ類の分布が調べられ,浜坂漁港を除く22 地点でそれ
らの巣穴が確認された.巣穴数から推定されたスナガニ類の生息密度は各砂浜海岸で異なり,東西の端に位置する気比川東と居組県民サンビーチで高い値を示した.本研究で採集されたほとんどの個体がスナガニであり(甲幅が6 mm 以下の未同定個体を除く),ナンヨウスナガニも1 個体のみ見つかった.先行研究においてスナガニ類の生息密度が高かった浜坂漁港の砂浜は,近隣の岩壁の整備やそれに伴う港湾工事によって消失し,本研究ではスナガニ類の巣穴を確認することができなかった.このことから,砂だまり程度の小規模な砂浜は周辺海域の人的利用によって容易に失われてしまうことが示された.さらに,近年の温暖化に伴って,日本海側の砂浜海
岸においても南方系種が侵入・定着し,在来のスナガニ個体群に影響を与える可能性が考えられた.
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