スポーツ活動中のCOVID-19の感染拡大予防の一つにスポーツ用具,物品の消毒がある。本研究の目的は,野球ボールへ各種消毒液を塗布した後の手指の触感の違い,及びボール表面の超微細構造変化を評価することである。対象の野球ボールは1,硬式(天然皮革)と2,軟式(天然ゴム)であった。消毒条件は,A:水,B:次亜塩素酸ナトリウム,C:界面活性剤,D:エタノールとした。各液を使用して200回の消毒を繰り返した後に官能試験を実施した。実施者は一般健常成人11名で,「つるつる」「べたべた」「かさかさ」の3つの触感をVisual Analogue Scale(VAS)を用いて評価した。統計処理は消毒無しをコントロール(コ)としてMann-WhitneyのU検定を用い,P<0.05を有意差ありとした。さらに電子顕微鏡で消毒前後のボール表面の構造変化を観察した。触感はVAS(0~10)にて(コ)を5として評価した。1ではCが「つるつる」(2.7)と「べたべた」(3.4)で有意に(コ)に比べ低値を示した。2についてBは「かさかさ」(4.3)でのみ有意な低値を示した。A,C,Dは3触感それぞれに有意な変化がみられた。電子顕微鏡の観察は消毒前後で表面の凹凸の深さや数に変化が見られた。本結果から感染拡大予防における野球ボールの消毒液の選択としては,硬式ボールではCを,軟式ボールではBが推奨されると考えた。
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