本研究は,「違う」の新形式「ちが・ちゃ」に注目し,大学生の日常会話データに基づき,首都圏若年層による「違う」の使用を分析するものである.分析の結果,以下を明らかにした.本研究のデータにおける首都圏若年層の日常会話では,1)「違う」の形式のうち,「ちがう」の次に出現数の多い形式は新形式である,2)新形式は文末表現と体言を後接しない,3)「違う」が後接要素を伴わない場合,新形式が半数を占める,4)新形式は「違う」の用法によって使用傾向が異なり,<差異>で使用されず,<否定><話題維持>で使用される,5)「違う」が後接要素を伴わない場合,<否定>で新形式が半数近くを占め,<話題維持>で新形式が多数を占める.以上の分析結果に基づき,新形式の使用に関して「単純化」の傾向を指摘した.特に,「ちが」の使用に関しては,文法的な単純化として「類推」の可能性も指摘した.
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