愛知県名古屋市の4緑地の天然生林に11箇所のプロットを設置して樹木群集構造と多様性を調べた。調査林分の高木層では落葉広葉樹やアカマツが優占していたが、亜高木層では常緑広葉樹が半数のプロットで優占しており、近い将来、常緑広葉樹を中心とする林分に遷移が進むことが示唆された。調査した4緑地のうち、
明徳公園
は在来種数、外来種数、多様度指数のすべてにおいて最も高かった。種数とシャノン指数において、全多様性を緑地間(β2)と緑地内のプロット間(β1)、プロット内の多様性に相加的に分割した。β2とβ1は両指数で帰無分布より有意に大きい値を示した。種数におけるβ2は全体の46%を占めており、緑地間の差異が全多様性に大きく貢献していると考えられた。β1の源には地形や過去の森林の利用履歴の違いが考えられた。これらの結果から、地域全体の多様性を維持するためには、開発による緑地そのものの消失だけでなく、緑地内の異質性を減少させるような開発も避けることが重要であると考えられる。
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