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クエリ検索: "春日井市立神領小学校"
1件中 1-1の結果を表示しています
  • 堀尾 真理子, *中山 節子
    日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
    2009年 52 巻 P7
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/19
    会議録・要旨集 フリー
    目的
    近年、食に関する諸課題に対して関心が高まっており、教育現場では家庭科のみならず、食育や総合的な学習の時間等を始めとする食に関する教育実践が増えている。食に関する諸課題は多岐に渡るものであるにもかかわらず、健康や栄養バランス、マナーや食べ方、調理などに特化している実践も多く、安全、環境、消費、企業責任、生産地の労働課題、自給率、輸出入といった食に関わる課題を広く捉えて追究するような実践は少ない。野田(2007)が指摘するように、食に関する一人ひとりの認識が社会システムの変化を起こすことを考慮すれば、食を総合的に学ぶことが求められている。
    フードマイレージという指標は、日本で生産することができるものを遠くから輸入している私たちの食生活や暮らしを考えるツールである。この指標を用いて食の課題を総合的に捉えることを試みる実践が、社会科、家庭科、総合的な学習の時間などで取り組まれている。また学校教育のみならず、社会教育の場においてもNPOや財団法人などがフードマイレージを取り入れたプログラムの実施や教材開発を行っている。
    本報告の目的は二つある。一つは、自分の食生活と世界のつながりを考えるツールとしてソフト「フードマイレージ食堂」を用いて、大学生を対象に授業を行い、何を学び、どのような課題意識を持ったかを整理し、この教材の有用性を検討すること、二つには、これらを踏まえて、中学校家庭科における食生活と世界のつながりを考える授業計画を立て、その授業から生徒が学ぶ内容を明らかにすることである。

    方法
    既存の実践分析、教材の有用性などを先行研究とした。使用した教材ソフトは、東海フードマイレージ研究会が開発した「フードマイレージ食堂」である。このソフトと学習パネルの有用性を検討するため、試行的に大学1年生(24名)を対象に実施しこの教材から何を学び、どのような課題意識を持ったかを整理した。これらを踏まえて、食に関する諸課題を「安全」「環境」「値段」の三つの視点に絞り、中学校家庭科において授業実践を行った。

    結果
    フードマイレージを取り入れた既存の実践は、マイレージ計算の煩雑性や、算出された数値を自分の生活行動にひきつけて読み取る工夫がなされていた。しかし、環境負荷を算出する指標であるがゆえに、食の諸課題が環境に関わる課題に限定され、他の諸課題とのつながりが見えにくくなる危険性も孕んでいることが明らかとなった。このような課題を踏まえて、「フードマイレージ食堂」のソフトを使って、大学生に試行的に授業を行ったところ、食に関する諸課題を多様に捉えていた。 中学校の生徒は、ソフトを使って一日の献立によって出るCO2排出量と杉の木の本数を数値として知ることにより、何気なく口にしている食事が環境にどのくらい負荷を与えているのかを認識することができた。また、生徒自身の課題としてリアルに捉えさせるために、教師は、意識的に「対策として自分が出来ることは何か」「自分はどちらを選ぶのか。なぜそれを選ぶのか」という問いを与え続けた。生徒の感想から自給率を上げることが簡単ではないこと、安全や環境を考えた食品選択には価格の問題があることなど多面的に食を捉えていることが明らかとなった。
    今後、小学校や高等学校も含めて、このような社会的課題をどのように家庭科で扱っていくかが課題として残された。

    1野田知子(2007)「食のリテラシー形成と食教育のあり方」『技術教室』No.661,pp.12-16.
    2フードマイレージは食べ物を輸送する際の環境負荷を表す指標で、輸送量(t)×輸送距離(km)で計算する。
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