本論は、特に昭和30年代の街並みや文化を観光対象として活用した観光実践を「レトロツーリズム」と位置づけ、
その特質、歴史、成立背景について論考したものである。レトロツーリズムは、近年の昭和レトロブーム、まち
あるき観光の浸透を背景として出現した観光のスタイルで、1990年代初期にその萌芽が見られ、1990年代後半か
らその多様化を伴いながら発展し、2000 年代に成熟期を迎えて現在に至ったことを明らかにした。このようなレ
トロツーリズムを、規模や真正性の度合いから、レトロテーマパーク型、レトロストリート型、レトロミュージ
アム(アミューズメント)型、レトロミュージアム(アカデミック)型の 4 つに分類、整理した。その上で、観
光客にもたらす効果として、個人的ノスタルジア(原風景の追想)、集合的ノスタルジア、ライトエキゾチズム、
近過去の学習という 4 つの観点から論じ、レトロツーリズムの特徴的な効果が人々のノスタルジアの喚起にある
という知見を導いた。最後に今後の方向性として、インバウンドの拡大やレトロの対象年代の拡大が見込まれる
ことを提示した。
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