九州地方でかつてヒ素に汚染されたことのある地域から採集した微生物群からスクリーニングしたヒ素耐性淡水産藻類を用いて,ヒ素汚染淡水の浄化を目的として,藻類の生育条件とヒ素生体濃縮の関係を研究した。 単離した藻類のうち,らん藻のヒドロコリウム属とミクロケーテ属について培養温度・培地成分と生育およびヒ素生体濃縮の関係を調べた結果,培養温度は両者とも35℃ が最適であり,培地成分は前者は貧栄養,後者は濃厚栄養の培地でそれぞれ生育が良かった。一方,水相からのヒ素生体濃縮に及ぼす培養条件は,生育の良否と一致せず,水相ヒ素の除去のためには生育量と生体濃縮の積を大きくする培養条件の設定が必要である。 藻類の生育およびヒ素生体濃縮は,単Jの純粋培養よりも複数の藻類が混在する系の方がいずれも大きいことを見いだした。 また供試藻類はヒ素を取り込むと同時にヒ素排出の挙動があることをつきとめ,緑藻クロレラ属に関して,生育曲線の各生育期における細胞内ヒ素濃度,水相ヒ素濃度の経時変化を表す半理論曲線式を導入した。この式によって,水相ヒ素濃度を最低にする生育条件を設定・制御できることが分かった。
抄録全体を表示