生命保険買取市場が世界的に拡大する中で,大きな買取手数料や被保険利益の乏しい契約の買取など,契約者保護,投資家保護上の問題が顕在化している。その一方で,買取市場は,保険会社が対応しきれない契約者ニーズを引き受けていることも事実である。きめ細やかな規制は今後も重要であるものの,本来的には市場の監視機能を高めることによりこれらの課題に対応する次元に来ている。
そこで,本論文は,情報の非対称性の緩和や健全な市場の発展に不可欠な買取価格を適正に評価することを目的とする。買取価格は,保険数理を基礎とした保険市場だけでは決まらず,異なる判断基準を有する資本市場との折り合いを経て決定される。このため,責任準備金計算の算出に際し,従来の経験死亡率に安全率を上乗せする決定論的アプローチではなく,モンテカルロ・シミュレーションによる確率論的アプローチにより,保険市場の価格と資本市場の価格とを融合する。これにより,買取業者の超過利得の有無と更なる契約者還元の可能性を明らかにする。
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