「遠隔記憶検査」は, 1970 年代~2010 年に活躍した有名人が写る社会的出来事の写真を用いて, 人名の想起または再認, 出来事に関するキーワードの想起を求め, 得点化することにより, 健忘症患者の遠隔記憶を評価できる検査である。我々は 2010 年代の写真を用いて, 「遠隔記憶検査」の検査手法を踏襲した「更新版」を作成し, 信頼性と妥当性を検討した。2020 年時点で 20 歳以上の健常者 183 名に「更新版」を実施し, 世代ごとの平均得点と標準偏差を求めた。再検査法を用いて級内相関係数を求めた結果強い相関が示され, 本検査の高い信頼性が示された。また, 健忘症と診断された 15 症例に「遠隔記憶検査」と「更新版」を実施し, 各症例の偏差値を求めた。縦軸を偏差値, 横軸を出来事の年代としたグラフで示した結果, 症例の逆向性健忘の病態を検査結果で説明することができ, 妥当性が示された。本検査は「遠隔記憶検査」と同様に, 逆向性健忘の客観的指標として有用であることが示唆された。
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