老人保健施設 (以下老健施設と略す) は病弱な65歳以上の老人を対象とし, 通過機能と在宅ケア支援機能を期待されて創設された新しい療養施設である. これらの機能がどの程度果たされているかを1990年7月に都市郊外に設立された一老人保健施設利用者を対象に検討した.
1990年7月より1991年6月までの一年間に延べ264名の利用者があった. このうち初回入所後に退所した174名 (男66名, 女108名: 平均年齢81歳) を調査対象者とした.
対象者174名の入所時基礎疾患は脳血管障害50名(28%), 骨関節疾患 (骨折を含む) 63名(36%), 老年痴呆25名 (14%), その他36名であった. また常時要介助者 (いわゆる寝たきり老人) は83名 (48%)であった. 入所中の寝たきり度の変化を見ると常時要介助者の37%になんらかの改善が見られた. 退所先は自宅へ96名 (55%), 医療機関へ43名(25%), 福祉施設へ32名(18%), 施設内死亡3名であった.退所後 (1991年9月末) の転帰をみると自宅にいた者70名 (40%), 医療機関に入院中12名, 老健施設に入所中33名, 福祉施設に入所中35名であった. 当老健施設を2回以上利用したものは52名(37%)であった.
以上より老健施設は通過施設並びに在宅介護支援施設として期待しうると考えられた.
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