国立精神療養所における“植物状態”患者の実態を把握する目的で, 全国15施設にアンケート調査を依頼し, 1975年12月現在で該当なしの3施設を除き12施設より151例の回答を得た. 内訳は(a)“植物状態”44例, (b)周辺状態47例, (c)早晩“植物化”の危険を有するもの47例である. (a), (b)の総計は12施設の全在院者の約2%に当り, 著しい地域的偏りはない. 病棟別には老人・脳器質病棟以外の一般精神科病棟に内因性愚者らと混合収容されているものが40%に及ぶ. “植物状態”の原因疾患としては初老期痴呆及び老年期痴呆が最も多く(50%), 脳血管障害(27.3%)はこれに次ぎ, 年令的には60才以上の高令層が約70%で, これらの点は脳外科領域の同種調査との相異点である. 少なからざる例数が“植物化”後5年以上経過しており, 医療内容の充実に伴つて将来の経過延長傾向が予測される. “植物状態”患者に対し現在進行阻止の努力が行われているが, “植物化”前に高度の知的・人格的崩壊状態, 行動上の問題など医療上の困難は多いが, 残存する機能の維持にも努力が向けられなければらなない.
抄録全体を表示