第二次世界対戦後,国際間の安全保障の観点から人口問題が注目され,アメリカの主導のもとに家族計画を中心とする政策が形成された。しかし,政策が実行に移されるまで,アメリカ国内において激しい論議が戦わされ,その論点の違いはそのまま後に国際社会に持ち込まれた。1960年代に開発途上国が頻発した自然災害のために食糧危機に見舞われ,アメリカの人口政策が急速に具体化した。しかし,家族計画は微妙な問題を含むため国際ネットワークを通して推し進められた。戦後の開発途上国は,国家予算の50%を対外援助に依存しており,当時の国際環境も絡み家族計画を政策として受入れた国は少なくない。しかし, 1970年代に入り依存経済から脱皮する国が増え,これを背景に開発を中心とする人口政策が模索されはじめた。1980年代以降では,開発,健康,家族計画を包括する総合政策が取られはじめた。最近ではプログラムの効果的運用の観点から,脱中央化の方向が目指されている。それと同時にサービス対象の個別化が重視されるようになった。わが国の国際貢献は国連機関を中心に進められてきたが,経済的に発展した結果,二国間協力もかなり大きな規模に達している。政府間ベースで行われている協力は,国際機関の重点項目とほぼ一致しており,内容的にも遜色はないと思われる。しかしながら,運営面では改善すべき問題があり,今後努力する必要がある。
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