大規模地震などの災害時,自治体のもっとも重要な役割の一つは,発災から24時間以内の混乱時に,人命にかかわる情報を迅速に収集することである.この問題は重要であると同時に極めて困難な問題である.なぜなら,通常,避難所は被災地に点在しており,その全体像を把握することは容易ではないからである.本稿は,新潟県中越沖地震の際に,迅速な避難所の情報の収集・集約を行なった柏崎市役所のケースを取り上げ,なぜ迅速な情報収集が可能であったのかを理論的に考察している.ここでは情報の流れ方として,コミットメント・フローの概念を提示し,柏崎市役所による鍵職員制度が,意図せざる機能として避難所情報を上方組織へ迅速に伝達したことを明らかにしている.今後の防災対策のあり方として,避難者情報の収集を考慮した「見えざる防災」にも目を向ける必要があることを提言している.
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