本研究では,白色度70―88%ISOの原料に着目し,六種類のパルプ(広葉樹材酸素漂白パルプ二種,TMP二種,古紙パルプ二種)を中性または酸性で抄紙し,加速劣化処理による黄変挙動等について検討を行った。つぎに,広葉樹材酸素漂白クラフトパルプ(LOKP)から調製した無塩素(ECFおよびTCF)漂白パルプについて,パルプのヘキセンウロン酸(HexA)含有量と黄変挙動との関係について検討を加えた。さらに,LOKPからの新規ヘキセンウロニダーゼを含む粗酵素液によるHexA除去について,探索試験を行った。
HexA含有量が高いLOKPを酸性抄紙したパルプの湿式加速劣化試験では,乾式加速劣化試験に比べるとパルプ白色度の低下が大きかった。一方,日光照射劣化試験では白色度が向上する現象が認められた。日光照射劣化試験では,木材とほぼ同じ特徴のリグニンを有するサーモメカニカルパルプ(TMPとBCTMP)のリグニンは着色構造に変化するが,酸性抄紙による白色度低下への影響は小さかった。古紙含有のコピー用紙(PPC)と新聞古紙(NP)には,化学パルプと機械パルプの両方が配合されていると考えられ,加速劣化処理条件および抄紙時のpHにかかわらず,白色度は比較的安定性であった。
中性抄紙の場合では,どの加速劣化処理条件でも同じHexA含有量でLOKPの白色度低下が一番小さく,TCFおよびECF漂白パルプはほぼ同じ程度であった。酸性抄紙の場合,これらのパルプのHexA含有量が高いほど黄変が大きい傾向がみられた。白色度の安定性が高い順から高白色度TCF≒ECF(A―Dシーケンス)>ECF(D―Aシーケンス)>半晒TCF>LOKPの順になった。
ヘキセンウロニダーゼ(Δ―X
3活性)粗酵素液を用いたLOKP中のHexAの除去効果については,酵素添加量0.24U/g,pH5.5,40℃,6時間のパルプ処理を行うと,最も良い結果が得られた。パルプから約20mmol/kgのHexAが除去される時に,約40mmol/kgのキシロースが生成した。
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