症例は82歳の女性で,1週間持続する嘔吐で当院に入院となる.腹部CTにて上部空腸の狭窄・壁肥厚を認めた.小腸造影では十二指腸憩室および上部空腸に造影剤の貯留を伴う3cm大の陰影欠損を認め,小腸腫瘍によるイレウスと診断し,手術を施行した.手術所見では,トライツ靭帯から約20cmの空腸内に腫瘤を触知し,空腸部分切除術を施行した.切除腸管内には2.3cm大の腸石を認めた.この腸石は結石分析でデオキシコール酸が98%以上を占めており,真性腸石の一種の胆汁酸腸石であった.十二指腸憩室は比較的よくみられるが,治療を必要とすることは少ない.自験例のように憩室内からの腸石落下によると思われるイレウス発症の報告は少なく,若干の文献的考察を加えて報告する.
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