ニトロ化合物添加ピッチが熱処理をうけて黒鉛に至るまでにどのような過程をたどるかについて,無添加ピッチとの比較のもとに, 種々な見地から実験と考察を加えた。対象試料としては重縮合によって生じたα 成分,1250℃に処理したいわゆるコークス,2600℃ に処理した黒鉛化物,更に2800℃ に処理した高度黒鉛化物の4種を主体とし,また,方法としては,電子顕微鏡観察,カウンター法および写真法によるX線回折,粉末固有抵抗と試料の充填性,磁気係数,ブロム収着,比表面積,粒度分布,熱膨張係数および真比重をとりあげた。この結果,添加ピッチは通常のピッチとは基本的に異なり上述のすべての段階で特異な構造を示すが,これはニトロ化合物による,コークス化前の重縮合反応に起因するものと考えられ,実験によって説明することができた。なお,黒鉛化物の電子顕微鏡像は特にこのものの異常な2次構造を示し,X線回折法や電気抵抗,磁気係数等にあらわれる1次構造差とは根本的に異なるものであることを知り得た。
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