2014年は世界結晶年である．の主な基盤的学問である結晶学が生まれて，ほぼ100年を経たことになる．この記念すべき年にファルマシアでの特集が組まれたことに敬意を表し，X線結晶構造解析を中心としたの歴史と発展について述べる．

抄録全体を表示

近年のタンパク質結晶学, の分野には目を見張るものがある.それは放射光の利用であったり, コンピュータの革新的な進歩であったり, 遺伝子工学・分子生物学の発展によって後押しされている.結晶構造解析を武器にを発展させてきたが, その「結晶学」をどのようにとらえているのか, あるいはとらえていくべきなのか.今回結晶学会誌特集号を企画するにあたり, 第一線で活躍する若い研究者たちにその方向性を自由に討論していただく場を設けた.この座談会は平成14年度結晶学会年会最終日に東京で行われた.という分野で, 今われわれはどのような問題に直面し, またそれをどのように克服し, かつ発展させていかなければならないのか, 結晶学が貢献できるところはどのようなことなのか, 年末のお忙しい時期にもかかわらず長時間の議論をしていただいた.なるべく当日の座談会の雰囲気を再現したつもりであるが, 迷惑のかかるところは割愛させていただいた.所属する研究室もそれぞれの立場もまちまちな者同士であったが, 共通していたことは, 当然のことながらまじめに将来のの姿を想定していることであった.みんなこんなことを考えているのか, と読んでいただき, また10年後に読み返していただいて多少なりとも的中していれば, の特集号として成功であろう.参加者は本文中にコメントとともに顔写真を掲載させていただいた.裏方は編集幹事の野中, 神谷, 森本がつとめた.

抄録全体を表示

特集にあたって：ファルマシアでに関する特集を組むのは，1999年の「と創薬科学」に続いて2度目となる．前回の特集から15年が経過したが，その間に日本では，2002年度から3,000種類のタンパク質の立体構造解析を行うことを目標とした5年計画であるタンパク3000プロジェクト，2007年度からはターゲットタンパク研究プログラムが5年計画として実施された．本特集号では，最先端の種々の構造解析技術，in silicoでのコンピュータ創薬などの最先端の知識を紹介している．本特集号が読者の皆様の探究心をくすぐることを期待している．
表紙の説明：文学作品において，メビウスの帯は無限の繰り返しを比喩的に表すものとして用いられる．本表紙は，メビウスの輪の中に本特集号と関係の深い図を連続的に組み入れたものである．今後も永遠に研究が引き継がれ，は無限に発展するだろう．

抄録全体を表示

Hydrogen atoms and water molecules around proteins and nucleic acids play a crucial role in many physiological functions. Neutron diffraction provides an experimental method of directly locating hydrogen atoms. (a) Since almost all the H atom positions can be identified experimentally, the geometrical details of certain types of H-bonds can be visualized and (b) as far as mechanistic implications are concerned, the identification of protonation and deprotonation states of certain important amino acid residues can be carried out. (c) The hydration structure around proteins and the hydration networks around DNA oligomers have been successfully characterized in several outstanding cases.
These will open the new field beyond the folding structure of bio-macromolecules such as:
1) Recognition of proteins and nucleic acids through the network structure of water molecules surrounding bio-macromolecules, and
2) The nature of chemical bond in proteins and nucleic acids elucidated by the accumulation of accurate structural information of hydrogen atoms.

抄録全体を表示

DNA複製のためにはオリゴヌクレオチドプライマーが必要であり，プライマー合成はPrimase-polymerase(Prim-Pol)ファミリーに属する酵素が担っている．Prim-Polの役割はDNA修復や獲得免疫など多岐にわたり，これまで熱心に研究されてきたが，de novoでDNAが合成される機構については不明だった．本稿では，X線結晶構造解析によりPrim-PolによるDNAプライマー合成の分子基盤を解明したLiらによる研究を紹介する．
なお，本稿は下記の文献に基づいて，その研究成果を紹介するものである.
1) Guilliam T. A. et al., Nucleic Acids Res., 43, 6651–6664(2015).
2) Li A. W. H. et al., Nature, 605, 767–773(2022).

抄録全体を表示

Many eukaryiotic proteins are glycosylated after translation to become mature proteins. Efficient sorting of such glycosylated proteins is essential for the cell's function and is achieved by vesicle transport. Mannose 6-phosphate (M6P) modification of lysosomal proteins is recognized by a M6P receptor (MPR) which incorporates the lysosomal proteins to vesicles. Recently GGA proteins have been identified and later verified as a new family of adapter proteins distinct from well known AP-1 to 4 complexes. They are responsible for vesicle transport of glycosylated human proteins from the Golgi apparatus to early endosomesl lysosomes. We have determined the crystal structures of the VHS domain of human GGA 1 and the ear domain of human γ1 adaptin. Combined with biochemical and cell-biological data, these structures reveal the recognition mechanisms of the acidic dileucine motif signal of mannose-6-phophate receptor by the VHS domain of human GGA protein and the interaction between the ear domain of γ1 adaptin of the AP-1 complex and γ-synergin and Rabaptin-5. They constitute part of a rapidly growing ensemble of structures of transport proteins, where protein-protein interactions, as elucidated by X-ray structural analyses, play critical roles.

抄録全体を表示

今日の創薬研究において、

の利用は欠かせないものとなっている。構造解析の成功確度の向上や構造を取得するまでに必要な時間の短縮により、的手法をベースとした確度の高いStructure Based Drug Design（SBDD）が、創薬に貢献している。また、解析の対象となるタンパク質も従来の可溶性タンパク質に限られたものから、Gタンパク質共役受容体（GPCR）をはじめとした膜タンパク質へとその範囲を広げつつある。本特集では、X線結晶構造解析やNMR による構造解析手法に加えて、低温電子顕微鏡やX線自由電子レーザーなども活用した最新のとその創薬への応用について紹介する。

抄録全体を表示