江戸時代, とりわけ18世紀以降の地図収集のネットワークについて, これまで具体的に論じられたことはなかった. 本稿では大坂天満宮祝部渡辺吉賢の収集した地図を出発点にして, 地図の貸借をしていたことが明らかな人物を網羅的に提示し, そのうち代表的な人物にっいて吉賢との関わりを論じた. そして, その上で地図収集のネットワークの広がりにっいて検討を行った. その結果, 日本中にネットワークが広がっていたこと, 身分や職業を越えて地図の貸借があったこと, そして世代を超えた時間的広がりを持ったネットワークになっていたことなどを指摘した. また, このようなネットワークは, 森幸安の地図作製にも関わるなど, 地図史の展開において不可欠な役割を担っていたことも明らかにできた.
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