秋に鳴く虫として有名なクツワムシMecopoda nipponensis とマツムシXenogryllus marmoratus は,長野県においては南端の天龍村のみに生息する南方系の種である.両種は2014年に天龍村で新たな生息地点が記録され,地球温暖化のもとで今後も分布が拡大していく可能性が高い.本研究では,天龍村近隣でこれまで両種の分布が調べられてこなかった地域を対象とし,重要な移動経路と想定される天竜川沿いを中心に分布調査をおこなった.両種ともに,天龍村の南端から佐久間町までの間において,天竜川沿いの複数の地点で生息が確認された.ほかに
水窪川
沿いの一部では生息が確認されたものの,天龍村周辺では平岡から佐久間町までの天竜川沿いに分布が集中していることがわかった.これにより,天竜川沿いは両種にとって重要な分布の拡大経路であり,今後も川沿いに分布が北上していくことが示唆された.
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