本稿の目的は,日米安全保障体制の下で,軍用機騒音被害が横田基地周辺住民にどの程度押し付けられてきたのかを,社会的費用という概念を利用して,明らかにすることである.本稿では,横田基地における軍用機騒音被害の状況を示した上で,損害賠償額に関する訴訟の争点を整理し,社会的費用の推計を行っている.推計の結果,1973年5月から2004年11月までの期間で,全共通被害額の2.4%だけが新旧の訴訟を通じて原告らに賠償されたことが明らかにされた.換言すれば,この間の2108億円の全共通被害額のうち,2058億円が「考慮されざる費用」として横田基地周辺の住民に押し付けられてきたということになる.
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