症例は46歳,女性.2004年4月ころから動悸を認め,2004年5月4日,飲酒後失神し,当院へ救急搬送された.当院到着時は80/分の洞調律であったが,入院後,再度失神した.この時のモニター心電図では10秒に及ぶ完全房室ブロックを呈していた.一時ペーシングを行い,後日,原因検索のため心臓カテーテル検査,心臓電気生理学的検査(EPS)を行った.CAG,LVGは正常であった。EPS(1st session)開始時には,洞性頻脈で,AH,HV時間は正常であった.カテーテル操作にて周期長300msのAVRTが誘発された.Kent束は逆伝導のみを有し,3時方向に存在し,190/分の心室刺激まで1:1に対応する良好な逆伝導性を有していた.アブレーション電極カテを左室に挿入するとCAVBを生じた,まず,ペースメーカ(VVI)の植え込み,次いでアブレーションを行う予定とし,1st sessionを終了した.2ndsession;AVRTが誘発されなかったため,右室ペーシング下に, まずKent束の離断に成功した. 離断後の房室伝導は,160回/分の心房頻回刺激まで1:1伝導であったが,170回/分刺激にて2:1HVブロックを生じた.今回は房室結節二重伝導路はなく,His束不応期は380msと延長し,disopyramide100mg投与後には,さらに容易にHVブロックが生じるようになった.本例の刺激伝導系は,His束以下障害が存在し,頻拍時など多くの伝導刺激が同部に侵入する時や薬物にてその障害が増幅,顕著化する発作性房室ブロックを呈していた.
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