江國香織の「草之丞の話」は高等学校の教科書教材に収録されている作品である。指導書では「語り手」に着目することで読みを深めていく学習を目標にしているが,具体的な指導案は記載されていない。そこで本研究では江國香織「草之丞の話」を椎名誠「ふろ場の散髪」,内田百閒「冥途」と比べ読みをする学習指導を想定し,綿密な教材分析を行うこととした。比べ読みを行うことで語りや作品構造に着目させて学習者の読みを深めていくことを目指すのである。さらに,語りの信憑性を問う読み方の指導は,学習者の批評する力の育成に繋がっているということも論じている。「草之丞の話」は学習者の読みを深め,そして学習者の批評する力が育成される教材的価値を有しているのである。
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