本論文では, 明治後期に我が国で成立したトーネット法による曲木加工の導入経緯とその定着について考察した。最初に, 明治中期から昭和初期までの史料から, 広葉樹の利用と曲木産業の育成に関する事項を摘出した。次にその内容を分類し, 明治中期から大正初期の編年化を試みた。その結果, 次のような内容を明らかにした。農商務省は, 明治20年代後半よりドイツ, オーストリアを手本として木材利用の基礎研究に着手し, 20年以上の歳月を費やして, 広葉樹の利用促進と曲木椅子生産技術の導入を進めた。その最終目標は輸出産業の育成であった。民間企業は, 曲木椅子の輸入が増大する明治30年代末から相次いで設立され, 東京と大阪でほぼ同時期に生産を開始した。
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