以上述べてきたように両グループを比較してみると,Aグループについては次のようなことが云える。
1.患者自身の病気に対する理解が深まり,病識と共に,ベースには依存的な性格が関与しているのではないかという考え方が徐々に取り入れられてきた。
2.現実肯定がなされず,強い反発を続けている患者に対しても有効に作用し,次第に自己洞察に向い,受刑者として受容的な態度や協調性が認められた。
3.施設や治療環境に対する不平不満が改善され,社会復帰を目指した治療への動機づけがなされている。
Aグループの治療効果については,本グループの約半数が10セッション終了後,症状好転のため元施設へ還されている。
これに対し,Bグループでは自発的な発言や,活動性の高揚など,目立った効果は認められなかったが,おだやかな雰囲気の中で,日常的な会話がかわされることにより,親和性を高めたり,連帯感を強めることなどがうかがわれた。
これ等両グループをみると,Aグループに観察される前半の抵抗や攻撃性が,後の態度変容を示す過程に重要なポイントとして関与しており,これ等は将来,彼等の自立に不可欠なエネルギーの存在を示すものと云えよう。
一方Bグループにおいては態度変容が殆んど認められず,このことは,第1報で述べたように身体疾患者においても同様の傾向を示している。
これ等グループ差の要因としては,構成メンバー,刑期,IQの違いなどが考えられ,これにつれて,治療効果,或は経過の差異が大きな影響を与えているものと考えられる。
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