背景 : 印環細胞型乳癌は予後不良とされる. われわれは印環細胞型浸潤性小葉癌の 1 例を経験し, 細胞学的特徴と含有粘液に関して報告する.
症例 : 50 歳代, 女性. 検診で腫瘤を指摘され当院受診. 乳腺穿刺吸引細胞診で桃色の豊富な粘液をもつ細胞や橙黄色の粘液を有する印環状の腫瘍細胞を認めた. 組織学的には, 腫瘍細胞が間質へ線状, 索状に浸潤し, targetoid pattern を認めた. 約 20% に PAS 反応で強陽性を示す印環型の細胞を認めた. Alcianblue 染色では一部のみ陽性となった. E-cadherin は陰性, p120 は細胞質にびまん性に陽性で, 印環細胞型浸潤性小葉癌と診断した. 古典型小葉癌部では MUC1 が細胞膜に一致して全周に陽性, 印環細胞型小葉癌部では細胞膜および細胞質内粘液にも強陽性を示した. GCDFP-15 は古典型小葉癌部では陰性, 印環細胞型小葉癌部は約 8 割が細胞質内粘液に一致して陽性となった. MUC2, MUC5AC, MUC6 は両細胞とも陰性であった.
結論 : 印環細胞型浸潤性小葉癌は, 特徴的な細胞形態をとり, 粘液が MUC1, GCDFP-15 で陽性を示すが, MUC2, MUC5AC, MUC6 では陰性となる.
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