多用されている既製品マウスガードの問題点について,大学アメリカンフットボール部ならびに高等学校ラグビー部とボクシング部選手合計92名を対象に,アンケート調査,咬合圧力,ならびに装着前後の音声分析に至る総合的検討を行うと共に,カスタムメイドの必要性とカスタムメイドに必要な基本的問題を検討し以下の結論を得た。
1.アンケート調査結果から,すでに使用していたアメリカンフットボール選手の回答から,使用しているマウスガードに対する理解は低く,59.4%が不満を抱いていた。その主な回答は,違和感であった。ラグビー部の回答からも同様な結果が得られ,更に,話しづらいと呼吸しづらいが共に57.9%と高頻度を示した。
2.マウスガード装着あるいは非装着時の咬合圧力測定結果は,装着時は非装着時と比較し積分咬合圧力,咬合面積は顕著に減少するものの,咬合面積当たりの平均咬合圧力は,増加していた。
3.マウスガード装着あるいは非装着時の声の音声分析による比較では,話しづらいと訴えた如何に関わらず,後舌,前舌母音共に不明瞭な声となる結果を得,特に話しづらいと訴えた者は,この傾向が顕著であった。
以上の結果から,既製品マウスガードは,使用への意欲がそがれる問題点が多く,衝撃減衰能からして咬合時の接触歯への強い影響が疑え,発声に関する問題点も明示された。更に,カスタムメイドマウスガードの設計にあたり,前歯唇面,口蓋側の形態と厚さについて今後検討の必要性が示唆された。
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