長崎県外海域の野母半島野母崎町沿岸, 五島列島福江市沿岸ならびに対馬東岸美津島沿岸において潮間帯海藻類の着生帯潮位の測定を行ない, これと関連して有用海藻類増殖上の問題について若干考察を行なった。
1) 潮間帯海藻類の着生潮位を基準面からの高さで測定した。
主な海藻の着生潮位と潮汐との関係をみると, イワノリ・フクロフノリ・ハナフノリはほぼその地の平均水面または小
潮平均干潮位の上部より大潮平
均満潮~飛沫帯まで広い幅で着生帯がみられる。またこれと同位にはボタンアオサの着生帯がみられる。
マフノリはほぼその地の平均水面を中心に小
潮平均干潮位より小潮平
均満潮位に着生がみられ, これとほぼ同位にはイロロ・イシゲ・イワヒゲの着生帯がみられる。またマフノリ下限帯付近にはカモガシラノリの着生がみられる。
マツノリ・ヒトツマツ・トサカマツは基準面上60~90cmの高さから上限はその地の平均水面に着生帯がみられる。
ヒトエグサは小
潮平
均干潮位の20~30cm下方から大
潮平
均満潮位の広い幅にみられ, フノリ着生帯の全層にわたっている。
ヒジキ・ウミトラノオは基準面上30cm位の高さから上限はその地の平均水面付近に着生帯がみられる。これと同位にはシワノカワ・ワタモ・ハバノリ・カゴメノリの着生帯がみられる。
フクロノリはヒジキ群落帯の下限付近から大
潮平
均干潮位に着生帯がみられ, その下限から最下部群落としてコブソゾ・ピリヒバなどの着生帯が形成されている。
2) 野母崎町沿岸ではフノリ (主としてフクロフノリ) の着生帯にはイロロ・イシゲの群落の形成が発達して混生帯を形成しているところが多く, 刈り取り調査の結果では両種間に相当高度の負の相関々係がみられ, イロロ・イシゲのわずかの侵入によってフノリの単位面積当り生産量が指数函数的に減少し競合関係があることがわかった。またヒジキとウミトラノオとの関係でも同様の結果がみられた。
3) マフノリを対象に岩面はく離による群落更行を調べた結果, マフノリの天然群落の発達した近傍であればマフノリが群落更行の第1次侵入老とみられ, 胞子の放出期が増殖施設適期とみなされる。
4) 対馬東岸美津島町の鴨居瀬, 赤島の潮間帯群落の着生潮位を測定比較した結果, 岩礁面の向きによる水の動揺の度合によって同一群落構成種でもその着生潮位に著しい差異がみられ, 水の動揺の大きいと思われる赤島「八点」の地先が同一群落構成種の出現する着生潮位が著しく高く, また帯幅は最上部群落 (イワノリ) ほど広くなっている。
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