【目的】児童生徒の心身の実態把握を行うために活用したシート使用の実態から、熊本地震発生直後の混乱期における養護教諭の対応や、使用したシートの課題を明らかにする。
【方法】平成28年12月から平成29年1月に、K県内の養護教諭57人にアンケート調査を行い、「シートの集計・分析・活用」の自由記述をコーディングし、「養護教諭の実践」と「養護教諭の思考」についてカテゴリー化した。
【結果】「養護教諭の実践」では6、「養護教諭の思考」では2のカテゴリーが得られた。「養護教諭の実践」ではシート結果以外の情報も加味した分析が最もコード数の多いカテゴリーであり、「養護教諭の思考」は8割が課題に関する内容であった。
【考察】シートの実施回数や分析方法等の明確な基準がなかったことで、様々な不安や悩みを抱えながら対応していたことが分かった。しかし課題を感じながらも、健康観察結果や来室状況、担任や家庭からの情報など、シート結果以外の情報も加味し、専門性を生かして総合的に判断していたことが分かった。また、担任や管理職等の職員や保護者、SCやSSWなど、校内外の連携が必要であり、養護教諭がコーディネーターの役割を果たしていたことも明らかとなった。さらに、これらのカテゴリーを整理したシート使用の過程は、日常の健康相談活動のプロセスと一致した。養護教諭は地震後の混乱期において、迷いながらもその専門性を生かして対応を行っていたことも分かった。これらのことにより、危機管理は日常管理の延長であり、日常的な関わりや実践の積み重ねが重要であることが示唆された。
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