本稿の目的は,リストカットした女子高校生への学級担任による援助の経過を報告して,危機的な状況において援助が効果的に行われるための要因を検討することである。報告者は,リストカット後の援助の要請を受けて,生命の危機を救い,安心できる環境を用意して,理想我と現実我のギャップを小さくする援助を行った。事例に基づく考察から,1)普段から情報交流を行って教師,生徒と保護者のリレーションを形成しておくことが,危機的な状況における援助要請や援助体制の速やかな確立につながること,2)特に家族の信頼関係の再形成や心の絆を回復することが,自殺防止や自殺未遂後の援助に有効であること,3)危機的な状況においても,適切なアセスメントと援助方法を身につけておくことが教師に求められることを指摘した。また,教師による危機介入モデルの必要性を指摘した。
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