患者は脳梗塞の既往がある61歳の女性で,突然の腹痛を主訴に来院した.来院時,腹膜炎症状を呈し,腹部US, CT検査にて腹水貯留を認めた.確定診断は得られなかったが,急性汎発性腹膜炎の診断にて,緊急試験開腹手術を施行した.術中,胆嚢底部の漿膜面より胆汁の漏出を認めたが,明らかな穿孔は認めなかった.胆嚢摘出術および腹腔内ドレナージ術を施行した.術中採取した胆嚢内胆汁,及び腹水の細菌培養の結果は陰性で,胆汁細胞診,及び腹水細胞診の結果は, Class Iであった.摘出標本では,胆嚢内に結石を認めず,底部に直径1cm大の粘膜,筋層の打ち抜き状欠損部を認めた.漿膜面は脆弱であったが,明らかな穿孔は認めず,その周囲の静脈内に血栓を認めた.患者は,術後6日目に心筋梗塞を併発し,死亡した.本症例は,虚血性病変が関与したと思われる胆嚢の部分梗塞による特発性胆嚢穿孔と考えられた.
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