日本における株式会社は, 立法目的とは大きく異なり, 多数の小規模閉鎖会社によって占められている.平成2年の商法改正により最低資本金制度が導入されたが一人会社の設立を認めたことにより, 実質上も形式上も株主が一人しかいない株式会社が出現することになった.このような閉鎖的株式会社の株主が, 世代交替などによって新たな株主に, それも必ずしも利害関係の一致するとは限らない株主にとって代わった時に, 困難な問題が生じる.対立する株主間の調整ができなくなれば, 少数派の株主-それも多数派とはさして保有株式数の差がない場合もある-の無視, 多数派の横暴といった事態や, 完全に総株式の半数ずつ保有しているという極端な場合は, 膠着状態が生ずる.このような紛争に関し, 判例に現われた事例を分析してみると, それぞれの解決方法が十分なものではなく, 法の改正を俟たねばならない部分がある.しかし, 現在進行中の商法改正試案にも問題があり, その解決方法としてひとつの提案をする.
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