(背景と目的) 腎細胞癌に対する腎摘後, 原発性肺癌および腎細胞癌の微小肺転移を同時に認めた稀な症例を報告する.
(症例および結果) 57歳, 男子. 他科疾患精査中に偶然右腎細胞癌を発見. 腎摘後2年4ヵ月目に原発性肺癌を認め, 摘出巣の病理診断にて低分化型腺癌と, 病巣近傍に clear cell carcinoma を認めたが, その時点では腎細胞癌の肺転移と断定は困難であった. その後9ヵ月後, 肺に多発性の coin lesion を認めたため, 肺に認めた微小な clear cell carcinoma は臨床的に腎細胞癌の肺転移と診断し, 現在インターフェロン-α療法を行なっているが新病変の出現もなくNCの奏効度を維持している.
(結論) 腎細胞癌の術後, 原発性肺癌と腎細胞癌の微小肺転移を同時認めた稀な症例であるが, 腎細胞癌の肺転移に関しての診断は, その後の病状の変化を待って診断されたもので, 先行する癌の治療経験を有する症例の新たな癌病変の診断に際しては, 組織学的検討に関して十分留意する必要があると考えられる.
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