非線形現象の泣き所の一つは, 仮に波数空間でながめた場合, いろいろな波数の波が相互作用をしていて複雑な系になるということであろう. この場合, 波数のスペクトルという概念で問題を把握することになるのだが, スペクトルを与えられて物理空間でのイメージがすぐに浮んでくる人は少ないかも知れない. 非線形現象の中には, 基本の正弦波が, 所々で振幅や位相に修正を受けて, いわゆる変調された波になっているものがある. この場合には, 基本の正弦波としての時空間変動以外に, 振幅や位相が修正を受ける程度があるので, 一般にいくつものスケールを導入して現象をながめてみると, 案外すっきりするであろう. そうすると, 異なるスケールでの世界は互いに弱い相互作用しか行わず, それぞれ異なる方程式によって支配されるという見方ができそうである. ここでは, 異なったスケールを系統的に導入する特異摂動法の一つである微分展開法を紹介し, これが非線形波動変調の問題に如何にうまく適用されるかについて解説する.
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