本稿は、高齢期の資産形成を後押しする仕組みの一つである企業型DCに着目し、どのような内容の制度的対応が現行法上用意されているかを確認するとともに、今後検討すべきと思われる課題について考察したものである。
具体的には年金シニアプラン総合研究機構における研究会調査により明らかになった課題を踏まえて、多様な主体が登場する企業型DCの大枠と各主体の役割を掴んだ上で、一般に運用を後押しする仕組みと、運用に積極的ではない人に向けた後押しについて考察している。さらに、企業型DC制度では自ら選定した運営管理機関を事業主が5 年ごとに評価し、問題があればその変更をすることによって加入者の利益を図り、加入者の資産形成を後押ししていく設計となっているが、現状としては運営管理機関の変更は容易ではないという問題状況について指摘する。
最後に、制度的な介入が強化されればされるほどに主体的に運用するという本来のあるべき姿からはかけ離れる可能性があるため、その点には大いに留意する必要があることや、主体的に運用しない人が増えることにより生じる問題と制度的介入を強化することで得られる利益はどちらが大きいかを精査しながら制度設計する必要があることを指摘している。また、主体的な運用を行う人が増えるように情報提供や継続教育等が重要であることを確認する一方で、さまざまな理由から運用等に積極的になれない人が一定数存在する場合には制度的な介入の必要性が高まることを示し、結局、想定される典型的な加入者像をどのように捉えるかを見極めることが重要であることを論じている。
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