研究1で,九九学習においても,ワーキングメモリの役割は大きく,ワーキングメモリに課題のある児童には,ワーキングメモリへの負荷を軽減できる学習方法が重要であることが明白となった。研究2 では,ADHD 児とASD 児の障害特性とワーキングメモリとの2 要因をもとに,九九学習への配慮に必要となる要因の組み合わせの類型化を行った。その結果,認知特性と障害特性の両方に配慮のいるタイプ,認知特性のみに配慮のいるタイプ,障害特性のみに配慮のいるタイプ,配慮をあまり必要としないタイプの4 つに分かれた。ADHD またはASD のある4 事例による研究3 の結果から,九九学習でADHD 児とASD 児の障害特性や認知特性に着目したときの配慮や支援として,長所活用型学習方法の使用,特性に応じた学び方の保障,注意・集中の問題から起こるつまずきの予防という3 つの視点が大切であるということが導き出された。
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