本研究の目的は、家族介護者の語りの分析から自らの介護生活をどのように意識し、意味づけしているかを考察することにある。A県内の認知症カフェに参加した家族介護者5名(介護期間9.8±3.6年)を対象にグループディスカッションを5回・計約3時間行った。分析の結果、介護を始めた当時の心境として、認知症の初期症状の対応に関する「苦労」、介護ストレスなどからくる「葛藤」、公的サービス利用やスタッフとの「摩擦」があったことが示された。また、現在は、ストレス発散などの「工夫」、当事者や公的サービス機関スタッフへの「共感」があり、介護体験を通した「悟り」の思いを抱きながら在宅介護を継続させていた。家族介護者にとっての認知症カフェは、知識や情報を得る場となっており、これらは家族介護者の負担軽減や介護力向上に寄与する可能性が示唆された。今後の認知症カフェにおいては、専門職による教育的支援、ストレスの発散、当事者同士のピアカウンセリングなどが受けられるプログラムの構築が求められる。
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