【目的】
私たちは、高校の普通科目「家庭基礎」(2単位)を履修した生徒達に、将来、食生活の自立を促すことができる知識や技術を身につけさせることを目指して、調理実習の効果的な指導法の開発に取り組んでいる。第1報では、視覚的に捉えられる写真で構成したオリジナルレシピ集を開発し、その検証授業の結果、生徒達は主体的に実習を進めることができ、調理への興味・関心が高まったという報告をした。
本研究では、継続して実践を行っている福岡県立A高校2年生で実施した筆記テスト(183名2009年2月)の結果、実習に関する知識の定着が浅いという課題から授業での知識や技術の理解度を高める手段として、自己評価表(FBシート)の開発を行い、その効果を検証することを目的としている。
【方法】
(1)自己評価表の開発
調理実習における評価について先行研究を調査し、調理実習での自己評価表の開発を行った。
(2)自己評価表を用いた検証授業
2009年10月から2010年2月にA校(2年148名)で4回、B校(2年145名)で2回・C校(1年280名)で2回の検証授業を行なった。
(3)質問紙法と筆記テストによる分析
実習前後に質問紙法と実習に関する筆記テストをA・B・C校で実施した。
【結果と考察】
(1)「家庭基礎」の4回の調理実習で調理の知識を身につけさせるために、実習後に「自分達の実習はどうであったか」という授業の振り返りができるフィードバックシート(FBシート)の開発ができた。その活用によって、実習での評価基準(目標)がわかりやすく、
生徒達は自らの学びを客観的に評価できるようになった。
(2)A校で2008年度と2009年度の同一進路別クラスでの筆記テストの結果を比較したところ、2009年度では平均値が約3.7点上昇し、質問毎の平均正答率も向上した。つまり、FBシートによる振り返りは、実習中に行う作業の一つひとつの目的や役割を確認することに繋がり、学習の理解度を高めるために効果があることが分かった。
(3)また、A校での実習前の筆記テスト結果から生徒を4グループに分類すると、中位層下位~下位層の生徒の伸び値が大きい。つまり、これまで家庭で調理の経験が少なかった生徒に対してこのFBシートが効果的であることを示している。この傾向はB・C校においても同様の結果が得られた。
以上の結果から、FBシートは生徒の知識の理解を促すと同時に実習への意欲を引き出すなど生徒の自己学習力を高めることがわかった。また、教師にとっても生徒一人ひとりの実習状況が把握しやすくなるという利点もあった。今後の改善点として、FBシートの効果をさらに高めるためにはその使い方や記入手順を明確にするとともに生徒が使いやすく、使用効果が実感できるものへ改善することが必要であると考えている。
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