大腸内分泌細胞癌の2例を経験したので本邦報告例の集計とともに報告する.症例1は53歳の女性で下痢を主訴に来院し,注腸および大腸内視鏡検査で上行結腸に亜全周性の隆起性病変を認め,腹部CT検査では上行結腸の他に腹腔内数カ所に腫瘤を認めた.上行結腸癌,腹膜播種と診断し,右半結腸切除と可及的に播種の摘出を行った.患者は術後13カ月経過した現在健存中である.症例2は66歳の女性で排便時出血を主訴に来院し,大腸内視鏡検査で直腸に半周性の2型腫瘍を,腹部CT検査で多発性肝転移を認め,腟後壁合併直腸切断術を施行した.患者は術後59日目に死亡した.いずれも腫瘍細胞は多角形でシート状に配列しており,免疫組織学的にchromogranine A染色に陽性の顆粒を認め,内分泌細胞癌と診断した.内分泌細胞癌の本邦報告42例の集計では直腸に多く,リンパ節転移,脈管侵襲および肝転移を高頻度に認め,予後は不良で17例が1年以内に死亡していた.
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