最近, 高血圧患者には, 高頻度に耐糖能異常を合併することが報告されている. 同時に高血圧, 耐糖能異常はいずれも加齢の影響を強く受けることも知られている. そこで本研究においては,人間ドックを受診した576人を対象に, 日本人における高血圧患者と耐糖能異常の相互関係を解析するとともに, 対象患者を50歳未満・50~60歳まで・60歳以上の3群に分類して両者の関係に及ぼす加齢の影響についても検討した. 50歳以下の若年者では, 日本人においても欧米人と同様, 高血圧患者の耐糖能異常の頻度は正常血圧者に比し有意に高頻度であった. 一方, 50歳台では両群間に有意の差は見られなかった. 60歳以上の老年群では, 高血圧群で耐糖能異常を合併しやすい傾向を示した. また, 75g-OGTTで耐糖能正常と判定された症例においても, 高血圧群では正常血圧群に比し, いずれの年齢層においても, 血糖増加面積が高い傾向を示していたことより, 高血圧群は正常血圧群より耐糖能の低下を来たしていることが示された. 以上の結果より, 耐糖能正常者についてみると, 高齢群・青壮年群いずれにおいても, 高血圧の耐糖能に及ぼす影響が観察されるが, 糖尿病・IGTといった耐糖能異常に関してみると, 正常者のIGT・糖尿病への移行には, 高血圧よりも加齢の方がより強い影響を及ぼしており, このため, 加齢の影響を考慮しなくてよい青壮年者においてのみ高血圧の耐糖能に及ぼす影響が認められると考えられる.
抄録全体を表示