交流分析の代表的な心理療法理論を, 心療内科領域における心理療法にどのように適用しうるか, 具体的な例を通して検討した. バーンの時代から交流分析の基本理論とされている自我状態分析, やり取り分析, ラケット・ゲーム分析, 脚本分析と, バーン自身が提示した8つのセラピー操作はあらゆる見立てや治療的介入の土台となる. グールディング夫妻が開発した再決断療法は患者自身のセラピーへの主体的取り組みが求められるが, 「子ども」 の自我状態が賦活され, 劇的な変化が期待できる. ジョインズらが完成させた人格適応論に精通することによって, 患者の複合的パーソナリティ特性の理解とそれに基づいたセラピーのプランを組み立てることができるようになる. ハーガデンらが提唱した関係性の視点は, 「自己」 すなわち 「子ども」 の自我状態が混乱しているため, 自身の傷つきを意識化できない患者とのセラピー関係において, 洞察と指針に導いてくれる.
抄録全体を表示