既設の防風樹列帯及び森林の周辺にどのような積雪の変化が現われるかについて,昭和28年の1月から4月までの間北海道野幌試験地で観測実験を行い,地上障害物として門柱・露場の柵囲い・防風垣・樹列帯・森林内に標測点をもうけてこれに簡易
積雪計
をたて積雪を親測した所,門柱(高さ2.14m)の風下側ではSE方向に著しく深く吹払による凹都を形成し,その長さは門柱の高さの3~4倍となりその巾は広い所で2m以上もあつた。露場の柵囲い(高さ90cm,柵板の巾9.5cm)の周辺では柵内の積雪は複雑な起伏状態となり裸地よりも多く,柵周辺の融雪も柵外の標準より3日以上遅れた。カラマツの刈込をした防風垣(高さ1.5m)は次第に積雪下に埋まり,常緑で被条の密なモンタナマツの樹列帯(高さ4m)は風上側はなだらかに積雪を増し,風下側は樹高の2倍の範囲に雪溜りができたが,下枝の疎なネグンドカヘデ・カラマツの並列樹列帯(高さ9m)の風下側の積雪の変化は軽微であつた。これら樹列帯周辺の積雪の融雪は積雪の多寡による外,樹蔭によつて左右される傾向が多分にあつた。
森林内の積雪は林外の20~30%少く,また樹種及び林分の欝閉度によつても相迸し,森林内での融雪は裸地に比し10~15日遅れるばかりでなく林分の構成によつて更に遅速が現われた。
野幌の昭和27, 28年間の冬の風向は概ねW~NWが多く,平均風速は5~6m/secであつて次多のSE~SSE風はこれにくらべると風速はかなり弱かつたから,吹溜り,吹払を生じる風向は主としてN~NWである。
一般に積雪は例年の気象現象によつて支配され殊に風向・風速・降雪・気温等によつて種々変化があるほか地上障害物の有無・種類によつて変化が生じるので,防雪柵,防雪林,防風垣等の設置には,これら諸因子の観察調査を充分に行う必要がある。
抄録全体を表示