症例は65歳男性,昭和63年11月失神発作のため当院緊急入院となった.入院時心室性頻拍症を認め,抗不整脈剤,β-プロッカーの投与で軽快した.入院検査の結果,心室中部肥大型心筋症と診断した.さらに心尖部心室瘤ならびに心尖部に直径1.8cm大の大型血栓を認めた.退院後,ホルター心電図装着中に再度失神発作を起こし,この時12.8秒の洞停止が記録され,再入院しペースメーカーの植え込み術を施行した.
心室中部肥大型心筋症は心尖部心室瘤を生じやすく,また壁在血栓合併の報告もあるが本症例はさらに経過中に頻拍型ならびに徐拍型致死性不整脈を合併した.これらの合併症は本症例の診断,治療において留意すべき点と考えられたので文献的考察を加え報告した.
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