本論文の目的は，古物・骨董の業者間市場を分析対象として，自由な参加が制限されたオークションでは，どのようなメカニズムで市場秩序が実現されているのかを明らかにすることである．業者間市場は，価格を情報媒体とした取引が行われている，という意味では市場取引の形態をとる．しかしながら，そこではメンバーシップが制限されているため，純粋な市場ではなく，集団・組織の要素が含まれた市場が成立している．業者間市場においては，継続的な社会関係が形成されることでインフォーマルな規範や慣習が共有され，さらには，協調的な関係ばかりでなく垂直的な権限関係が形成されることで，規範や慣習から逸脱した者に対する統制が可能となっている．オークションという場で形成される水平・垂直的な社会関係や，そこで共有される規範や慣習といった「理念的な市場」では想定されていない諸要素によって，市場秩序が達成されているのである．
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